2022.01.21

『炎:Honō』創作ドキュメント(後編)|輝くステージへ〜人生の炎が燃えた

2021年10月24日(日)快晴。
日英共同制作舞台作品『炎:Honō』の幕が上がり、そして下りました。

公募で集まった56歳から81歳までの、俳優経験がない人たち10名が、人生の輝きを舞台上で魅せてくれました。

 

参加者自らが選んだ思い思いの衣装は、本当にカラフルで、照明に美しく照らし出されました。200人ほどが観劇できる広い劇場の舞台で、前を向いて表現する彼らの姿は、どっしりと力強く、輝いていました。

台本がない、ドキュメンタリーのような、10人の参加者とアーティストらがやり取りして創った唯一無二の舞台。3人のスコットランドの参加者の来仙は叶いませんでしたが、映像で出演してくれました。

創作過程のドキュメント、後編です。(前編中編

(後編)舞台公演
輝くステージへ〜人生の炎を燃やす

いよいよ10月23日(土)、公演する劇場の宮城野区文化センター・パトナシアターに入ります。

男女別の楽屋は、女性は「女優鏡」も付いた仕様。自分の空間をセッティングしたあとは、舞台監督による劇場ツアーからスタートです。舞台上から舞台袖、様々な舞台装置がある中で、危険がないように動線を確認します。

それから、照明や音響などと合わせていく、「場当たり」。

プロフェッショナルな仕事をしてくれる舞台スタッフの元、参加者は安心して表現に集中できます。

そして午後には、ゲネプロ=リハーサル。

創作の場では、「大丈夫かしら〜」などと不安の声もありましたが、すっと集中して190席の大きな舞台上で堂々と表現する炎メンバーの姿に、すでに感動を覚えました。

 

リハーサルのあとも細かな演出が入ります。

最後までいい作品にブラッシュアップしようという、演出の2人のこだわりが感じられます。


10月24日(日)

快晴。

いよいよ舞台の幕が開きました。

カラフルな思い思いの衣装を身に付けた炎の皆さんが、美しく照らされた照明の中に現れます。

何が始まるのだろうというように、静まり返った客席。

そこにギターの音。トップバッターの入江徳子さんが、自分の殻を破るようにダイナミックなエアギターのパフォーマンスを行います。

金城良子さんは、お母さんが遺してくれた美しいチマチョゴリを着て、お母さんとの思い出、これまでの人生を。

石岡博之さんは、カッコ悪い自分について、そして大切な人へのメッセージを。

梅室邦夫さんは、本当にさまざまなことにご興味があり、職業や趣味を多彩に楽しんでこられたことを。

海野佳子さんは、大病を、自分を信じて自然療法で自ら治したお話を。

刈谷彰子さんは、10代の頃の自分と今の自分、そして未来の自分、変わるものと変わらないものについて。

山内裕子さんは、若いころのお母さんとの何気ない日常の思い出を。

小山真紀子さんは、ある時訪れた温泉宿の不思議な情景とその時の感動を。

平山裕子さんは、大切な方との別れ、そして感謝の気持ちを。

高橋櫻さんは、尽くしてきた人生から、自分の好きなものを謳歌する今現在の幸せについて。

1人1人の大切な本物の人生の物語は、しみじみと心に響くものがありました。

お客さまからの感想をいくつか紹介します。


”もう何年も忘れていた思い出が蘇りました。どんなことも人生の彩りに変えていけるように、前を向いて過ごしてゆきたいとしみじみ思いました”

”私ならどう表現するかな?私の大事なものは何だろう?私はどう生きているのかな?そんなことを考えさせられた”

”誰でも主役になれる、そんな可能性の大きい演劇だと思いましたが、そうではなく、それがすなわち人生だということに改めて気づきました”

”表現によって心が整う。そんなことを考えることができた”

”人の可能性を無限に感じられて、パワーをもらいました”

”小さく心を揺らされる場面が何度もあり、身近にある当たり前の誰もが経験する出来事の大切さを知れたような気がします”

炎メンバーの感想もご紹介します。


”ずうっとぼおっとしております。いろんな事が胸の中を去来しております。まだ誰とも話したくない。涙が溢れたりしてます。感動なのでしょうか”

”みんなで、夢中なって動いたり、励ましあったり、緊張したり、涙がいつのまにか出てきたり、よろこんだり、抱きあったり、まだまだ、夢の中にいるようです”

”私の人生を深く深く振り返るきっかけを頂きました。この企画に参加できた感謝と感激を忘れません”

”客席から見た舞台って、こんなにカラフルで素敵なんですね!”

さて、50歳以上の人たちと人生の表現を探る旅、第一楽章が終わりました。

そう、第二楽章はこれからどんなふうに展開するか、楽しみです。
お客さま、スタッフ、このプロジェクトを2018年から足掛け3年共に創ってきた Tricky Hat Productions と年配者のための舞台創作プロジェクト「TheFlames(炎)」メンバーに感謝を込めて。

日英共同制作舞台作品『炎:Honō』

【出演】 石岡博之(青森県弘前市在住)、入江徳子、梅室邦夫、海野佳子、金城良子、刈谷彰子

    小山真紀子、高橋櫻、平山裕子、山内裕子(以上、仙台市在住)

    ペネ・ハーマン・スミス、ジェス・フィッツジェラルド、トム・マローン(以上、映像出演)

【演出】 フィオナ・ミラー(Tricky Hat)、西海石みかさ、大河原準介

【音楽・作曲】 ミック・スレーベン(Tricky Hat)

【デジタルデザイン】 キム・ビバリッジ(Tricky Hat)

【振付】 小林あや(Tricky Hat)

【舞台監督】 菅原玄哉

【照明】 松崎太郎(アトリエミセイ)

【音響】 本儀拓(キーウィサウンドワークス) 

【映像撮影】 キム・ビバリッジ、村田怜央

【演出補】 佐藤有華

【通訳】 小林あや(Tricky Hat)、Mie Hiramatsu   

【宣伝美術】 homesickdesign / integrate

【映像収録】 桐島レンジ、濱田直樹(KUNK)

【舞台写真】 岩渕隆

【制作】 PLAY ART!せんだい

【プロデューサー】 オンディーヌ・オベリン(Tricky Hat)、大河原芙由子(PLAY ART!せんだい)

■主催: PLAY ART!せんだい、Tricky Hat Productions、公益財団法人仙台市市民文化事業団、仙台市

2021年度仙台市文化プログラム

■共催:(公財)仙台ひと・まち交流財団宮城野区文化センター

■後援:河北新報社

■助成:British Council and Creative Scotland、大和日英基金、笹川基金

文・大河原芙由子