2022.01.21

『炎:Honō』創作ドキュメント(前編)|物語を探る旅〜スコットランドと仙台をつないで

2021年10月24日(日)快晴。
日英共同制作舞台作品『炎:Honō』の幕が上がり、そして下りました。

公募で集まった56歳から81歳までの、俳優経験がない人たち10名が、人生の輝きを舞台上で魅せてくれました。

 

参加者自らが選んだ思い思いの衣装は、本当にカラフルで、照明に美しく照らし出されました。200人ほどが観劇できる広い劇場の舞台で、前を向いて表現する彼らの姿は、どっしりと力強く、輝いていました。

台本がない、ドキュメンタリーのような、10人の参加者とアーティストらがやり取りして創った唯一無二の舞台。3人のスコットランドの参加者の来仙は叶いませんでしたが、映像で出演してくれました。

 

創作過程からのレポートを前編・中編・後編に分けてご紹介します。

(前編)オンラインワークショップ
物語を探る旅〜スコットランドと仙台をつないで

本来は、2020年4月にスコットランドチームが仙台に来て、作品の創作&公演を行う予定でしたが、コロナで延期に。2020年度は、オンラインとデジタルデバイスを駆使して、英日でコラボレーションし、8つの美しい映像作品を創りました。映像作品はこちら

 

そしていよいよ2021年秋、映像創作プロジェクトに参加した仙台・弘前の10人、そしてスコットランドの3人の参加者=炎と、生の舞台作品の創作が始まりました。

皮切りのワークショップは、8月31日にオンライン(Zoom)でスコットランドと仙台をつないで行いました。日本時間は夕方17時、スコットランド時間は朝9時です。

Zoomの小さい画面をユニークに使ってゲームなどして楽しんだあと、トリッキー・ハットのフィオナ・ミラーさん、小林あやさん、日本側ファシリテーターの西海石みかささん、大河原準介さんと、自らの人生からの表現を探りました。

 

それは、ファシリテーターの問いかけから始まります。
例えば、「年齢を重ねてきて、生活上で大切にしていることはありますか?」 「人生で後悔していることは?」など。

 

参加者は、ごく短い時間で、即興的に、自らの中から言葉やイメージをつかみ取り、皆に伝えます。ほかの参加者の語るストーリーが響き、思い起こされることがあったり、重ねあわせることがあったり、物語が紡がれていきます。
アーティストたちは、それらの物語をさまざまな角度から見て、ふくらませるポイントを見つけたり、視覚化したり、断片や重なりをパッチワークのように紡いでいきます。

回を重ねるにつれ、フィオナさんから表現を洗練させるようなアドバイスも伝えられます。


”「音楽が流れた。そのとき風が吹いた」など、情景をストレートに伝えていくのがいいかもしれない”
”過去の自分としてシーンの中にいて話す、外側から見て話すなど、視点を変えてしゃべるのも面白い”
”パースペクティブ(遠近法)、言葉と言葉の間の間合いも大事”

等々、自分の物語をお客さんにも伝えられるように、参加者は自ら表現の仕方を工夫していきます。宿題が出る回もありました。

 

オンラインワークショップは週1回ペースで全部で5回行い、1回ごとに、創作が深まっていきました。

文・大河原芙由子

 

主催:PLAY ART!せんだい、(公財)仙台市市民文化事業団、仙台市
   2021年度仙台市文化プログラム