2021.10.11

「みんなそれぞれ違う。だから、人間は大好きなんです」平山裕子さん|HONOに聞く。

 英国・スコットランドと日本・仙台の50歳以上の俳優ではないアマチュアの人たちが創るマルチメディア・ライブ・パフォーマンス、『炎:HONO』。ここではプロジェクトに参加する人たち一人ひとりを「炎」と呼ぶ。命が終わるときまで、輝くことをやめない彼ら。いま生みだす言葉を、炎に聞く。

ケ・セラ・セラ

― HONOのワークショップに関わってみて、いかがですか?

 

 そうねぇ、HONOに参加したからかもしれないし、もともとかもしれないのですが、あまり落ち込まなくなったような気がしますね

 

―すばらしいですね!

 

 単にノーテンキなんですよね。自分のことを、逆境に強いと思っています。東日本大震災の時も、ガスも何も出ないときに、大きな器に庭の石ころをいっぱい入れて、ロウソクに火をつけて、台所で焼肉をしたんです。冷蔵庫のお肉が溶けてしまうでしょう? 逆境になったら逆に楽んでしまおうという気持ちがありますね。何があっても大丈夫だろうって変な自信がある。私の父も「ケ・セラ・セラ」という言葉が大好きなんです。1つのことをじっくりやっていても、何か問題や天災があると中断になってしまうこともありますよね。それはそれで受け入れるしかないかな、とすんなり思うのです。あきらめが早いだけかもしれないけどね(笑)。

 

―HONOの参加者のみなさんとの関わりはいかがですか?

 

 自分の生活圏内にいない人たちと会うこと、自分からそういう人に会うことが、歳を重ねるとともに少なくなるじゃないですか。趣味サークルの人たちは、たいてい似たような考えを持っているんですよね。ですが、HONOに参加している人はそれぞれ違って、個性強いですよね。それに、はー!と感心したり、え?!と驚いたり。それがとてもいい刺激です。いやあ、いろんな人がいるんだなと思ってね。だから、人間は大好きなんですよ。多様な、自然の一部ですよね。

本音はもっと奥深くに

 

― 参加者のみなさん、それぞれ深いところに、本当にいろいろな思いや本音がありますよね。

 

 そうですね。自分の内面もえぐられました(笑)。1つのことに対していろんな感じ方があるんだなということがあらためてわかりましたよ。私たちくらいの年齢になると、生きてきた人生の指標がそれぞれ違うから、ものの見方も全然違うんですよね。だから、自分は違うなと思ったり、ちょっと共感したり。本当に、いくら歳を重ねても発展途上ですよね。

 

 参加者のみなさんの深いところにある思いを聞けてよかったなぁと思う一方で、でも本音はもっと深いところにあるんだろうとも思います。生きていれば、やっぱりいろいろあるからね。きっとまだまだあると思う。いろんな人と会えたことによって、自分の指標が、それぞれの指標があって感情の現れ方が違うとあらためて思えたんです。HONOで深く深く話すことがなかったら、こんな気づきは生まれなかったでしょうね、きっと。思いを出す機会がないし、見つめ直すこともなかったと思います。

歳を重ねるからこそ、つながるもの

 

― 歳を重ねてきて、どんなことを感じていますか?

 

 歳を重ねてきた分、いろんな人と出会えました。みなさんそれぞれの指標があって、感情の現れ方がある。だからこそ、人とかかわることで、感動したり、えぇ?!と思ったり。歳を重ねるほど、そういう自分の気持ちが出てゆくようになりました。演劇ワークショップをやってみて、より自分を見つめる機会をもらって、最近特にそう思うようになってきましたね。

 

― 日ごろ、友だちや家族とはしないような話を、演劇ワークショップの場ですることもありましたね。

 

 そうね。そういえば、わたしは大学のとき哲学科にいたんですよ。ゼミでは本当にいろんな話をしました。20代の若いころのディスカッションだったから、たいした話もできてなかった。でも、大学のゼミが終わってからもつい最近までずっと年1回会ったりしていて。いろんな人生がありますが、若いころとは違う話ができますね。現実と理論と空想と合わさって、だんだん糸がつながってきた。歳取ってからわかることもずいぶんあるかなって思います。

 

あとがき

 平山さんの言葉は、とってもみずみずしい。はつらつとした明るい印象がありながら、奥深く、ゆったりとたゆたう。インタビューにもあったように、たくさんの人と出会い、たくさんの感情と出会い、その都度迷ったり、何かを決断したりしてきたからこその、深さ。ケ・セラ・セラと明るく振る舞ってきたからこその、透明感なのだろう。これほど軽やかに、しなやかに、歳を重ねるにはどんな人生が必要だったんだろう。計り知れないその層に、おもいを馳せる。

文・写真:熊谷麻那(くまがい・まな)

1998年3月生まれ。編集者。フリーペーパー「炎:HONO」編集にも携わる。物語を感じるものことの編集をしています。

 

インタビュー:大河原芙由子(PLAY ART!せんだい)

マルチ・メディア・パフォーマンス『炎:HONO』は、2021年10月24日に上演予定。過去、現在、そして未来への希望を探り、人生や歳を重ねることについての物語を捉え直していく、炎たちの姿をぜひ感じに来てください。

 

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