2022.10.28

【報告】伝わらないからはじまる演劇ワークショップ@宮城野高校

PLAY ART!せんだいとしては初めて、高校生を対象に演劇ワークショップを実施しました。
今回ワークショップを実施した宮城野高校は普通科の他に美術科を設置するなど、芸術の分野の学びに力を入れています。

今回は、授業と並行して行われているゼミナールという枠組みのなかで「表現・芸術系ゼミ」の生徒およそ100名を対象に、「伝わらないからはじまる、演劇ワークショップ」を実施しました。

ファシリテーターはメインが大河原準介(劇作家・演出家)さん、菊池佳南(俳優)さん、サブは伊藤広重さん(俳優)、及川の4名です。

今年から本格始動した「表現芸術系ゼミ」では、9月にはミュージカル創作などを行ったそうです。その際、生徒たちの中には、舞台で表現することに慣れていない生徒がおり、先生方は舞台で表現すること、伝えることをもっと生徒たちに知ってほしいと思ったということです。

今回のプログラムは、「伝える、伝わる」テーマに、グループ創作と発表をメインワークとして構成しました。

ワークショップの冒頭はウォームアップです。会場となった体育館を、自由に歩くことから始めました。
あちこち歩く、ストップの声で立ち止まる、ゴーの声で再び歩き出す、誰かが止まったら止まる、誰かが歩き始めたら歩く、などバリエーションを増やしていきます。

生徒からは「空気読む感じがやばい(面白い)」など声が聞かれ、和気藹々とワークが進みますが、仲の良いお友達と離れて歩くことができない様子がありました。準介さんから「今度は1人で歩いてみよう」と声がかかります。
このワーク、全体の最後にもう一度行ったのですが、その時は初めから全員がバラバラに歩いてくれました。

メイン創作では20人1チーム、合計5チームがくじ引きで決まったお題を、ワンシーンとして創作します。お化け屋敷、お寺、教会、回転寿司など、その場所、場面が見ている人に伝わるように、動きをつけながら身体だけで創作していきます。

お寺チームでは「お寺と神社の違いがわからない!」というところから始まり、初めはどうグループで作れば良いかわからず膠着気味でした。ぽつぽつとアイディアが出てくるたびにファシリテーターが「ちょっと動いてやってみよう」「立って動いてみよう」と声をかけると、徐々にメンバーが自分の役割を見つけ始めていきました。
グループ創作は10分程度の時間で発表する作品を創るため、瞬発力が必要となります。初めて話す生徒同士が多い今回のような大人数の場合、ファシリテーターが小さなアイディアの種を、スピード感を持って拾い、展開していくことが重要になります。
お寺チームでは、仏壇チーム、山道の木チーム、参拝客、お賽銭箱に分かれて動きを作り始めました。役割が決まると自然とどう見えているか、もっと良い動き方はないか、少人数で話す様子がありました。
ここでメインファシリテーターの菊池さんからお題の追加がありました。それは、「ぎりぎりの」「超一流の」「まじやさしい」など、最初に取り組んだお題を少し脚色するお題です。お寺チームには「命懸け」のお題が追加され、賽銭箱を狙う強盗が、参拝客を襲うシーンに変更しました。

発表では、各チームの様々なアイディアを凝らした創作を観ることができました。大河原さんからは「演劇の面白さは、伝わると伝わらないの間にある」というコメントがありました。いわゆる「余白」や「行間」と言われる部分です。観客の想像力の幅は、作り手が思っているほど広くない、全く伝わらなければ意味がないし、全て説明してしまうと面白みが無くなってしまう。説明しすぎないが、周辺の情景や、間を使いながら、場面を構成し、伝わる内容にしていくことが、表現者として大事なことだと生徒たちに伝えていました。


ワークショップ終了後の振り返りでは、先生方から「短時間で、生徒たちがあそこまで作品を作れるとは思わなかった」「舞台芸術にこれから取り組む上で、とても良いスタートとなった」と感想をいただきました。
宮城野高校さんは今後も舞台芸術に取り組んでいく予定ということで、これからも連携を強めることができそうです。今後に期待したいと思います。(及川)

※この事業は「文化庁芸術家派遣事業(震災対応)」の一環で実施しました。

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