2021.10.22

「自由な魔女になって、空を飛ぶ」入江徳子さん|HONOに聞く。

 英国・スコットランドと日本・仙台の50歳以上の俳優ではないアマチュアの人たちが創るマルチメディア・ライブ・パフォーマンス、『炎:HONO』。ここではプロジェクトに参加する人たち一人ひとりを「炎」と呼ぶ。命が終わるときまで、輝くことをやめない彼ら。いま生みだす言葉を、炎に聞く。

お弁当箱の枠から、飛び出す

―HONOに参加しようと思ったのはどうしてですか?

 

 自分の枠から飛び出してみたかったのが一番ですね。 たまたま震災後に関わったプロジェクトで、エアギターの大会に出たんですよ。それまでやったこともなかったエアギターだけどなぜか、初めて出た大会でファイナルまで残ったの。勢いで始めたエアギターだったけど、根が真面目ということもあって、コツコツと練習を続けて大会も参加した。だけど、年を追うごとに成績が下がる一方だったのよ。そもそもエアギターってなんだろう?ってフィンランドの大会にまで足を運んだんだけど、かえってよくわからなくなっちゃった。

 

―じっさい、参加してみていかがですか?

 

 自分の枠はほとんどの場合、自分が自分に対して作っているんだと思うんですよね。その枠を自分は外したいわけです。HONOのワークショップのなかで、たくさん自分を見つめました。本当は自分はどう思っているんだろう?と探しているんですよ。誰かの人生の話も聴いては、じゃあ私はどうするんだろう?と。考える時間をもらっている感覚があるんですよね。そうやって自分に問いかける行動って今までやったことがなかったのだけれど、この行動のおかげ今、少しずつ枠をはずせてきているかな、と感じています。

 

 HONOももちろんきっかけだけれど、震災も1つのきっかけになっているかもしれないね。人生がいつ終わるかわからないとつよく感じた時期。私の人生はいつ終わるかわからないのに、人の目を気にしたりするのはどうなんだろう?と思った。そんな自分がものすごく残念で、すごくもったいない。そんなことしてられない!と思いました。

80歳まで踊っていたら、ブロードウェイにだって呼んでもらえるかもしれない

 

―ワークショップに参加して日常生活で変わったことはありましたか?

 

 わたしね、もともと身体が大きいんですよ。それがコンプレックスだった。でも、ワークショップなんかを通しながら「いいじゃない、私は私だよ」と少しずつ少しずつ思えるようになってきたんですよね。

 

―最近やっと思えるようになってきたんですか?

 

 歳を重ねて嫌だなとは思わないかなぁ。逆に、歳を重ねているだけ強いんだよと思う。 シニアのHIPHOPサークルにも通っているんだけど、人生を歩いてきたからこそできる表現があるだろうと感じるんですよね。歳を重ねれば重ねるほど、もっと面白い表現ができるかもしれないじゃない? 80歳まで踊っていたら、もしかしたらブロードウェイに呼んでもらえるかもしれない。もちろん、身体の機能が衰えることはあると思いますが、この自由な気持ちで自分として生きていけるって、すごくいいですよね。

魔女になって、自由な空を飛びたい

 

 わたしは、できることなら魔女になりたいんです。最近ハマっているのは近くの山で、人が雑草と呼ぶような草をとってきて、入浴剤にしたり、うまく活用すること。近い将来は食べるようになりたくて。そんなふうに、自然から恵みをいただいて、感謝しながら、たくさんのお花や草とともによろこびを感じて、しあわせに慎ましく暮らしたい。あ、でも、なんとかの目玉とか、カエルのスープとかはいやですよ。笑

 

あとがき

 入江さんのお話は、ことば1つ1つがきらきらと、光り透きとおっていくようだった。入江さんはきっと、とってもチャーミングな魔女になるんだろう。森の奥に小さな家を構え、植物と小さな動物に囲まれて、つつましく、穏やかに暮らす。入江さんの身体、心のなかから出てくる、光り透きとおるものたちが、どんな風にステージに現れるか、とてもたのしみだ。もしかしたら後ろから、小さな動物たちも覗いているかも。

インタビュー・文・写真:熊谷麻那(くまがい・まな)

1998年3月生まれ。編集者。フリーペーパー「炎:HONO」編集にも携わる。物語を感じるものことの編集をしています。

 

マルチ・メディア・パフォーマンス『炎:HONO』は、2021年10月24日に上演予定。過去、現在、そして未来への希望を探り、人生や歳を重ねることについての物語を捉え直していく、炎たちの姿をぜひ感じに来てください。

 

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2021年度仙台市文化プログラム

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