2021.10.20
「『歳を取っていく』こともまたすてきじゃない?」金城良子さん|HONOに聞く。
英国・スコットランドと日本・仙台の50歳以上の俳優ではないアマチュアの人たちが創るマルチメディア・ライブ・パフォーマンス、『炎:HONO』。ここではプロジェクトに参加する人たち一人ひとりを「炎」と呼ぶ。命が終わるときまで、輝くことをやめない彼ら。いま生みだす言葉を、炎に聞く。
人生の振り返りを、感謝と喜びで迎えることができた
―このプロジェクトに参加してみて、いかがですか?
『レジリエンス』(映像作品プロジェクト7作品目)に参加できたのが、すごくよかった。自分の人生を見つめ直すきっかけを作ってくれたことに感謝しています。
自分のことを、頑張ってきたなと思っているのよ。自分の人生について真剣に考えてきて、けっこう苦労もしたし、それを乗り越えてきた。自分で「良子ちゃん頑張ったなー」と思っています。それは、今が幸せだから感謝できるんだと思うのよね。自分の人生の振り返りを、感謝と喜びで迎えることができて、とてもうれしい。そのきっかけをくれたことに感謝ですね。
あと、私は演劇も映画も大好きなんだけど、今まで”観る”だけだったでしょ。これからは見方が変わると思う。今回は、金城良子を演じるけど、創るほうの立場で、視点で、演劇とかをみられると思うと、すごくまた楽しみが広がります。
あとはもう、わくわくをぶつけるだけ
―このプロジェクトに参加してみて、いかがですか?
躊躇なく表現できる雰囲気をつくってくれたおかげで、あたらしい自分に出会えてすごく新鮮でした。演出の人たちは提案しながらも、わたしたちに委ねてくれます。ほんとうは演出が、先にイメージを言ってくれたほうが楽なんだけど、これまでのワークもずっと、「あなたのイメージは何?」と問いかけてくれた。おかげでいろんなことを考えましたね。正解がわからないから不安だったんですが、途中で吹っ切れたんです。そうしたら、わくわくしだした。
だから最終的に、私たちをどうなってゆくのか、ほんとうに楽しみなんです。2年近く関わってきたからこそ、参加者それぞれの性格もそれなりに理解できた部分があって。あとはもう、このわくわくをぶつけるだけね。
「歳を取っていく」こともまたすてきじゃない?
―歳を重ねることに、どんなことを感じていますか?
「老いを押し付けられているなぁ」と感じるんですよ。確かに、見た目は歳を取りました。それは認めますが、心の中も頭の中も、じっさい何も変わらないのよ。老いに挑戦なんてない。子どもでも、若くても、挑戦するでしょう? 何も変わらない。
若いときのほうが老いを感じていたかもしれないね。老いを心配していました。「歳を重ねる」という言葉もすてきかもしれないけれど、「歳を取っていく(取りのぞいていく)」ということもまたすてきじゃない?
わたしたちは文化を作ってきた世代だと思うのよね。すごくお得な時代、挑戦する時代を生きてきた。若い時にビートルズを知り、サーフィンがあり、ミニスカートを履き、パンタロンを履き、大きな日本全体のカルチャーを浴びてきた。今も、すごい時代よね。みんな自由で、自分が選べる時代。それを作ってこれたのは、やっぱりわたしたち世代の見本があったからだと思う。今もわたしたちが文化を作っているんじゃないかな。スマホもPCも使う。文化を吸収してきたこの世代は、本当に元気なのよ。
―今一番情熱をかけてやっていること、これからしていきたいことはありますか?
人と関わって、助け合いたいね。歳を取っても、人のためにやっている人はすてき。
人のことを一生懸命考えている人はすてきよ。そんな自分になりたいの。人以外にも、文化でもなんでも関わって、私なりに理解して取り入れたいな。それこそ、スマホも「わかんない」ではなくて知りながら関わりたい。そして、助け合いたい。いろんなことを知りたい。
あとがき
金城さんのことばで、ハッとする。時間や、生きていればやってくる乗り越えねばならぬものに、のぞんでいかねばならないことには、年齢なんて関係ないのだと思わされる。同じようにきっと、「頑張ってきた」のだって年齢は関係ない。いつだって、何かに向かって頑張っているのは、わたしも同じ。きっと、あなただって同じなのだろう。いまが幸せだから感謝できる、と金城さんはいう。いまが幸せだと毎日言うのはむずかしいかもしれないが、ふと振り返ったとき、幸せを感じられる自分でありたい。
文・写真:熊谷麻那(くまがい・まな)
1998年3月生まれ。編集者。フリーペーパー「炎:HONO」編集にも携わる。物語を感じるものことの編集をしています。
インタビュー:大河原芙由子(PLAY ART!せんだい)
マルチ・メディア・パフォーマンス『炎:HONO』は、2021年10月24日に上演予定。過去、現在、そして未来への希望を探り、人生や歳を重ねることについての物語を捉え直していく、炎たちの姿をぜひ感じに来てください。
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