2021.03.11

「命の炎を燃やして、終わりたい」高橋櫻さん|炎に聞く。

英国・スコットランドと日本・仙台の50歳以上のアマチュアの人たちが創るマルチメディア・ライブ・パフォーマンス、『炎:HONO』。ここではプロジェクトに参加する人たち一人ひとりを「炎」と呼ぶ。命が終わるときまで、輝くことをやめない彼ら彼女らが、いま生みだす言葉を、炎に聞く。

違和感を抱えながら、飛び込んでみる

—HONOに参加されてみて、いかがですか?

 このプロジェクトを見つけたとき、自分の居場所、生きる場所がようやく見つかったって感じたのね。「炎」っていう名前から、命の炎を燃やすんだ、燃やして生き抜くんだっていう意味を汲み取った。私が求めているものや人たちに出会えるんじゃないかと思って参加したんです。やってみると、ワークショップなどの経験が、これから生きていくための土台になったかなという感じがあるの。足を踏みしめられているという安心感というか。

—それは、ワークショップの場やプロジェクトの中で、生み出されている言葉とか、フィオナ(HONO演出家)たちのやっていることが影響しているんでしょうか?

 影響していると思いますよ。ワークショップなどを通して、みんな何かを抱えて生きてきているなと気付いたりもして。でも一方で、ワークショップの帰りはいつもモヤモヤするんです。これは何の意味があるんだろう?って。自分は見た目と違って、意外と内面がナイーブ、恥ずかしがり屋で。やっていると、こそばゆくなってくるのね。舞台に立つなら、それを乗り越えなきゃと思うんだけど。

—ああ、なるほど。ワークショップは参加者の皆さんが、時に自分を晒したりして、普段生きている状態に、少し揺さぶりをかけることもあるからかもしれません。でも、やりたくなかったらやらなくてもいいと思うんですよね。

 ああ、そうか。できないと思ったらしなくていいんだ。求められているんだから私も動かなきゃって思っていたんですよ。違和感を感じながらやっているから、恥ずかしいとか、そういう感情が出てくる。言われたことをふっと取り入れて、楽しもうっていう気持ちではなかった。みんなの動きをみて、あんなことができるんだ、じゃあ私は何ができるの?となるのよ。

 だけど、気持ちが動いていることがいいのかもしれないね。なんでこれをやるの?って思いながら、動いていることが、見ている人に何かを感じさせるのかもしれない。

自分の気持ちを大事に生きていく

自分が思っていることと、人が見たときの自分は違うじゃない。私は、自分が思っていることと、違う評価を受けることの方が多かったの。櫻さんって悩みないでしょう?とか、全て恵まれているよね、とか。そんな人いないのにね。だから、人は私が頑張っていることとは違うことで評価するんだなあってずっと感じてたの。

—そうなんですね。櫻さん自身は、どんな人生を歩んできたと感じているんでしょうか?

 今までは、自分の気持ちなんて二の次で、この人のために私はどうしたらいいんだろうっていう生き方ばかりしてきた。だから、私の気持ちに気づいてくれる人も少なかった。この人のために、というのが実は、相手に響いていないことがあるとも知った。最近やっと、人のためだけに生きるのは辞めようって思えたんだよね。この先は、自分がどういうふうに生きたいかって気持ちを大事にして生きていこうって。人がどう評価するじゃなくて、自分が選んだ生き方でよかったって思えて死ねたらいいと思っています。

 この世の中にはいろんな人がいる。自分とは生き方が違う人を攻撃する人もいる。けれど、その人にはその人の生き方があるんだよね。それぞれ違う生き方をしたらいい。それでいいと最近は思うようになったの。だから無理に人に合わせない。人にどう思われても、自分が満足できることをやりたいっていう気持ちなの。

80歳のおばあさんだけど

—これからやっていきたいことってありますか?

 一番関心を持っていることは、宇宙。はやぶさ二号が戻ってくるでしょう?生命がいるかどうかがわかるかもしれないんだって。あとは、茶道。18歳の頃からずっとやってるんだけど、15年前くらいに1回やめちゃって。でも最近とてもいい教室を見つけてまた通ってる。そこでとても良い時間を過ごしているんですよ。毎日の筋トレも続けていきたい。筋肉が嘘をつかないというのは本当よ。びっくりするくらい体は柔らかいし、筋肉がついた。体も若返り、頭も若返った気がするの。

—櫻さんは、本当にエネルギッシュですね!

 もうね、やりたいことが沢山ありすぎて、時間が足りないのよ。あとは、この素晴らしい地球を守るためにできることをやっていきたい。私は80歳のおばあさんだけど、自分の孫よりずっと先に生きる人間のために、地球に生まれた人間として、やれることをやって死ねたらいいなって思いますね。

あとがき

櫻さんの話を聞いて思ったことは、悩みに歳は関係がないということだ。80歳の櫻さんも、22歳の私と同じように悩み、もがきながら生きている。力のある声で「人にどう思われても、自分が満足できることをやりたい」と聞いた時、身体にほっと勇気が灯ったように感じた。何歳になっても、前を向ける、輝いていけるんだと。

文・写真:熊谷麻那
1998年3月生まれの牡羊座。編集者。フリーペーパー「炎:HONO」編集にも携わる。 物語を感じるものことを編集しています

インタビュー:大河原芙由子(PLAY ART!せんだい)

マルチ・メディア・パフォーマンス『炎:HONO』は、2021年10月24日に仙台で上演予定。過去、現在、そして未来への希望を探り、人生や歳を重ねることについての物語を捉え直していく、炎たちの姿をぜひ感じに来てください。