2024.12.13

【実施レポート】六郷中学校コミュニケーションワークショップ

【実施先】仙台市立六郷中学校2学年 計108名(3クラス・各36名)
【日程】 2024/12/4,5,6
【ファシリテーター】菊池ゆみこ
【サブファシリテーター】菊池佳南・小濱昭博・鈴木萌加
【コーディネーター】タムラミキ
助成:仙台市市民文化事業団「文化芸術を地域に生かす創造支援事業」

*中学校での演劇ワークショップ実施のレポートを、演劇教育プロジェクトインターン生、東北大学の学生でもある梅内智穂子さんに作成いただきました。
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12月4日から6日にかけて、仙台市立六郷中学校でワークショップを行いました。今回のメインファシリテーターは菊池ゆみこさん(NPO法人PAVLIC)サブファシリテーターは仙台で演劇活動を行う3人の俳優が担当し、「自分と価値観や考えの違う他者と出会い、向き合う」ということをねらいとしたさまざまなワークを行いました。
初日はコミュニケーションゲーム、2日目と3日目は「スタンダップ大作戦」のワークを行い、生徒は3日間を通して価値観の違う相手と関わりながら向き合う経験を積みました。

初日のコミュニケーションゲームでは、仲間分けゲームで男女混合のグループを作ることに抵抗を示したり、クラスの中で関わることの少ない生徒に積極的に話しかけられなかったりする様子が見られました。しかし、回数を重ねるごとに指示を素早く実行できるようになり、「もっと早くやるにはどうしたらいいと思う?」という菊池さんの問いかけに進んで答え、協力してワークを楽しむ様子がありました。

最後の「仲間分け椅子取りゲーム」の最後、椅子に勝手にファシリテーターたちが座ってしまうというハプニングが起こります。生徒全員が椅子に座るためには、勝手に座っている人にどいてもらわなければなりません。強い口調で命令する生徒、何も言えず立ちすくむ生徒などさまざまな反応がみられる中で、菊池さんは「『向こうの椅子が空いていますよ』など、座っていたい自分に寄り添うような言葉をかけられると、分かってもらえるようで嬉しくなる」と生徒に伝えました。

2日目、3日目は「スタンダップ大作戦」のワークです。本を読みたくて頑なに椅子に座り続ける役を演じる菊池さんを立ち上がらせるため、班で協力して菊池さんにアプローチします。関わることの少ない生徒どうしで組まれた班では話し合いがうまく進まなかったり、班員の中で積極性に差があったりと、練習の段階では苦労する場面も数多くあったようです。

本番ではどの班も必死に菊池さんを立たせようとしましたが、菊池さんが椅子から立ち上がることはありませんでした。そのため、もう一度構成を組み直し、「リベンジマッチ」を行うことになりました。そこで菊池さんは生徒に「北風と太陽」の例を挙げ、「北風のような一方的な『立って!』という圧力を感じると立ちたくなくなる。太陽のように座っていたい自分に寄り添ってくれると立ち上がってもいいかなという気持ちになる」と伝えました。生徒は劇の中でどうやって状況を菊池さんに伝えるか、またどうやって立ち上がろうという気持ちにさせるか、熱い議論を重ね、サブファシリテーターや中学校の先生方も加えて休み時間も熱心に練習を行っていました。

リベンジマッチでは、ある班が見事菊池さんを立ち上がらせることに成功しました!成功した瞬間、生徒も先生も大きな歓声を上げ、自然に大きな拍手が生まれた場面が印象的でした。その他の班も菊池さんの気持ちに寄り添ったり、菊池さんを楽しい気持ちにさせたりするような工夫を凝らした劇を披露し、観客からは温かい拍手が送られました。

活躍してくださったアーティストと担当の先生

最後に菊池さんは、「価値観の違う他者と出会う」という今回のワークの趣旨を伝えたうえで、「社会では価値観の違う人とたくさん出会うけれど、そういう人も逃げずに向き合うことが大事。一番悲しいのは最初から何もせずにコミュニケーションをとらないこと。分かり合えないことはありうるから、諦めないことが必要」というメッセージを生徒に伝え、生徒は熱心に聞いていました。

初日の感想では「コミュニケーションが得意な子みたいに関わるのは難しい」といった消極的な意見もありましたが、最終日には「うまく工夫できた」「〇〇くんの役割がよかった」「他のクラスの劇も見てみたい」など、前向きな感想が多く出ました。

六郷中学校は小さい頃から同じコミュニティで過ごしてきた生徒が多く、異なる環境で生まれ育ち、異なる考え方をする他者と関わることが多くないようです。今回のワークショップでは、普段関わらない大人やクラスメイトと必然的に関わることになったため、困ったときに誰が何をするか、どのように話しかければよいかなど、生徒は常に頭をフル回転させていたことと思います。今後クラス替えや進学などによって自分自身や仲間たちと異なる価値観をもつ他者と出会ったとき、六郷中学校の生徒が今回の経験を思い出して他者と向き合うことができればいいなと思います。