2024.12.26

【実施レポート】宮城県白石高等学校七ヶ宿校 コミュニケーションワークショップ

【実施先】宮城県白石高等学校七ヶ宿校 全校生徒 当日参加者20名
【会場】七ヶ宿活性化センター
【日程】 2024年12月18日(水)
【ファシリテーター】菊池佳南
【サブファシリテーター】及川多香子・小濱昭博・小西奏太
【コーディネーター】タムラミキ
文化庁学校における文化芸術鑑賞・体験推進事業事務局(芸術家の派遣/東日本大震災復興支援対応)

*この実施のレポートは、演劇教育プロジェクトインターン生、東北大学の学生でもある梅内智穂子さんに作成いただきました。

12月18日、宮城県白石高等学校七ヶ宿校でワークショップを行いました。今回のワークショップはファシリテーターの菊池佳南さんをはじめとした演劇の世界に生きる大人たちと関わり、一緒にひとつの作品をつくることが中心となりました。生徒たちは学年を超えて協力しながら、学校や家庭以外の他者と関わる経験を楽しみました。

アイスブレイクではじゃんけんゲームを行いました。このゲームでは「じゃんけんの前にお互いの名前を呼ぶ」「負けた人が勝った人に質問する」などのルールが追加されていき、学年を超えて普段関わることのない人とのコミュニケーションが増えていきます。最初は少し緊張している様子がみられましたが、だんだん相手とのやり取りを楽しめるようになりました。最後まで残った生徒に温かい声掛けや拍手を送っていたことが印象的でした。

今回のワークショップは演劇の世界に生きるファシリテーターたちから話を聞き、その中で印象に残った場面を3分程度の劇で再現するという活動を行いました。生徒たちは時にうなずき、時に質問をしながらファシリテーターの話を真剣に聞いていました。学校にいる大人や家族、親戚とも違う生き方をしている大人たちのエピソードトークは、生徒たちにとって新たな刺激になったことと思います。

次に、ファシリテーターの話の中で印象に残った場面を短い劇にしました。練習では学年の垣根を超えて意見を出し合い、表現や立ち位置に工夫を重ねる姿がみられました。発表では、全校生徒や先生方、大人たちの前で演技をすることに緊張している生徒の様子が伝わり、それを全員で見守る温かい雰囲気が生まれていました。話をしたファシリテーターも生徒たちの忠実な再現に感動していました。

2回目の発表では、ファシリテーターが内容にまったく関係ない役で劇に乱入し、その役も出演させて同じ場面を演じます。難しい要求に対しても生徒たちは臆することなく取り組みました。ストーリーを成立させるだけでなく、1回目の発表からよりよく見せることについても話し合いや練習を重ね、どの班もより面白さの増した発表を行いました。1回目の発表で声を発しなかった生徒が2回目の発表ではセリフのある役を演じていたり、小道具や配置に新たな工夫を加えたりと、新しい役が加わる以外にも表現がブラッシュアップされている班が多くありました。短い時間で生徒とファシリテーターがともに作り上げた作品に観客からは大きな拍手が送られました。

生徒たちは、今回のワークショップで初めて出会った知らない世界の大人としっかり目を合わせ、話したことのすべてを吸収しようという心持ちで話を聞いていました。関係ない役が劇に入ってきても、いい作品を作ろうと全員で気持ちを一つにしていました。生徒たちが違う世界に生きる他者を受け止め、同じ空間をともに生きる仲間と捉える姿勢を身につけていたことが印象的でした。

七ヶ宿校の生徒はこれまでの学校生活で決してポジティブな経験ばかりを積んできたわけではありません。中には人と関わることに対してマイナスな思いを抱いたことのある生徒もいるかもしれません。しかし、生徒たちは広大な自然と温かい周囲の人たちの中で人との関わりを深め、楽しみ、自信をつけています。今回のワークショップでの経験が、社会に出てさらに広い世界でさまざまな人と関わるときに生徒の心を支えるものとして残ってくれたらいいなと思います。