2021.12.15
「英国の年配者と舞台芸術シーンの現在〜スコットランドの状況から」 プレイアート・ラボ vol.3 開催レポート(前編)
10月9日(土)に開催された、プレイアート・ラボ 第3回の開催レポート。
今回は、2019年から、PLAY ART!せんだいがご縁をいただき、共同で年配者との舞台創作プロジェクトを行なっている、英国・スコットランドのカンパニー、トリッキー・ハットのフィオナ・ミラーさんと、スコットランドの文化芸術シーンを幅広く支えるクリエイティブ・スコットランドのローナ・ダギッドさんに、英国の年配者と舞台芸術シーンの現在について、お話を伺います。
仙台における年配者とのアート活動をどう始めていけるか、考える機会となれば幸いです。
【スピーカー】
フィオナ・ミラー(トリッキー・ハット)
ローナ・ダギッド(クリエイティブ・スコットランド)
【案内役】
大河原芙由子(PLAY ART!せんだい)
平等性・多様性・包摂に重きを置いて活動を支援
ローナ:クリエイティブ・スコットランドは、スコットランド全土のクリエイティブ産業をサポートしています。主な資金源は、スコットランド政府からの交付金と、国営宝くじ基金です。より質の高い意欲的な作品を作ること、社会のあらゆる人が芸術活動にアクセスし楽しむことができること、芸術とクリエイティビティが英国の国の根幹をなすものと広く認知されることなどをめざし、助成事業、文化芸術やクリエイティビティに関する提唱などを行なっています。
平等性、多様性、包摂ということに重きを置き、多様な人々、コミュニティ、活動をサポートしています。持続的な開発の方法、公正な仕事、国際的な協力関係も欠かせません。
アート活動の可能性と参加機会
スコットランドの状況ですが、人口は今後減少し、平均寿命は2043年までに83.8歳、男性が80.6歳に増加すると予測されています。高齢化が進み、年金受給者は2043年半ばまでに22.9%に達し、労働年齢人口は減少します。
2019年のデータによると、90%の大人が文化的な活動に参加しています。女性、若者、教育を受けている人、身体的・精神的障害がない人、貧困ではない人で文化的なイベントや場所への参加が高く、60歳以上が68%以上であるのに対し、16〜39歳の90%が参加しました。地方の高齢者の参加も高くなっています。
また、調査回答者の47%がアート活動への参加の障壁として、年齢を挙げました。活動参加の機会が若者に偏っていて、高齢者の参加機会がほとんどないということは不満につながっています
クリエイティブスコットランドの「Our Creative Voice」という活動をご紹介します。アート活動は高齢者の豊かな生活に寄与するというものです。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの英国加齢縦断研究では、芸術活動への参加と死亡率との関連について、14年間のフォローアップ分析を行なっています。 受容的な芸術活動に頻繁に従事する人たちは、人口統計、社会経済的、健康関連、行動、および要因とは無関係に、死亡のリスクが31%低かったというものです。 コミュニティグループで歌うことは、メンタルヘルス関連の生活の質、不安、うつ病に大きな影響を与えているようで、高齢者の精神的健康を維持し、強化するのに役立つ介入である可能性があります。
年配者のクリエイティビティを支援する多彩な活動
さまざまな団体が私たちの助成を受けて活動しています。年配者のクリエイティビティを支援しているプロジェクトをいくつかご紹介します。
Luminateは、スコットランドのクリエイティブエイジングの組織で、クリエイティブエイジングのフェスティバルを開催しています。
Magdalenaは、認知症の方とのパフォーマンス創作活動を20年にわたり行ってきている団体です。
Capital劇場では、認知症の方も楽しめるプログラムを展開しています。
Scottish Balletでは、パーキンソン病を患っている方とのダンスプログラムを行なっています。
もちろん、Tricky Hatの活動も含まれています。
(お話は後編につづきます。)
▼▼後編のトピック▼▼
・Tricky Hatが50歳以上の人たちと行っている演劇創作カンパニーThe Flamesのお話
・Q&A
ぜひ、後半もご覧ください。
助成:多様なメディアを活用した文化芸術創造支援事業( 公財)仙台市市民文化事業団)
(文・熊谷麻那)