2022.07.01

PLAY ART!せんだい通信<箱のなか、箱のそと> vol.11

● コラム「想像力と実感」

● 注目!国家予算に占める文化支出の行方

 

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箱の外側の誰かによる、箱そとコラム。

『想像力と実感』

 六月、沖縄へ行きました。
 恥ずかしながら、慰安の日が六月二十三日とは知りもせず、目的も実はなく(観光しようとはさらさら思っておらず)、ただ沖縄に呼ばれた気がして、わたしはその月に行くことを決めたのでした。
 出発の二週間ほど前、ヴェルナー・ヘルツォークの『氷上旅日記』を読みました。自分にとって重要な人物が死ぬかもしれない知らせを受け、ミュンヘン – パリ間を歩く日記です。Googleマップでぜひみて欲しいのですが、その距離なんと約170kmほど(!)。わたしにはその過程が魅力的に思え、ほんのわずかでもその景色を見れないだろうかと考えました。そして、歩くべき場所として、沖縄が適切だと思いました。

 夜八時ごろ、大通りを外れ歩いていると、怖さが込み上げてきました。疲れた身体を持ちながら、助けを呼べる場所もない。動物が出てきても、怪しい人が現れても、わたしは抵抗できない。ここではたとえ、どんなに弁が立とうが、大金を持っていようが、この怖さが消えない。草むらや猫に怯え、車が通るたびに警戒し、何があってもおかしくないと思いながら、集落を二つ越えました。
 出発前より、夜は怖いだろうと想像はもちろんしていました。暗闇は想像できていて、それでも歩こうと思っていた。けれど、想像の怖さと、実際に感じる怖さはそもそも質がまったく違いました。想像では辿り着けない場所に、実感はあるのだと知りました。

 次の日、普天間基地のすぐ隣にある、佐喜真美術館へ行きました。そこで見たのは、丸木夫妻の『沖縄戦の図』。絵は言葉よりもずっと、描写する出来事を身体に訴えてきました。丸木夫妻の絵にはそんな力がありました。
 ただ、それでも甘いのだと思います。当時の人々の実感とは、圧倒的に距離があるのでしょう。他者は他者で、人間は人間で、個は個。どれだけ想像をしても、共感をしても、辿り着けない場所がある。わたしは想像の力を信じ過ぎていたのかもしれません。

 沖縄で一番感じたのはこのことでした。それでも、想像するのをやめたくはないとも、同時に思う。やめてはいけない、とも。わたしにはまだ適切な態度がわかりません。わかりませんが、その方向はずっと向いていたいと今、思っています。

(文・写真:熊谷麻那)


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『注目!国家予算に占める文化支出の行方』

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