2021.10.01
「仙台からはじまるアートマネジメントの現状と課題」プレイアート・ラボ vol.1開催レポート(後編)
9月4日(日)に開催された、プレイアート・ラボ第1回の開催レポート、後編。PLAY ART!せんだいのめざす、”社会包摂的な文化芸術”はどうしたら実現されるのだろう? これからのアートマネージャーを育てていくためには? とざっくばらんに話し合いました。同じ志を持つ人たち、また、分野問わずたくさんの人を巻き込んで生まれる文化プロジェクトに興味のある皆さん、ぜひご覧ください。
【スピーカー】
左から
・菅野幸子(AIR Lab アーツ・プランナー/リサーチャー)
・桃生和成(一般社団法人Granny Rideto 代表理事/地域プロデューサー)
・千田優太(一般社団法人アーツグラウンド東北 代表理事/遊び人)
・千田祥子(公益財団法人音楽の力による復興センター東北 コーディネーター)
案内役 及川多香子(PLAY ART!せんだい)
文化をひろげてゆく、その先
ー 及川:ここからは参加者のみなさんにもご意見をお伺いしていきます。沖縄県立芸術大学で、民俗芸能からアートマネージメントの育成をされている呉屋さん。何か事例などありますか?
呉屋:私からはリサーチを続けている宮城県山元町・坂元小学校での「こども神楽」について紹介します。こども神楽の運営には、中浜神楽と坂元神楽という2つの神楽保存会団体が関わっています。もともととても仲が悪かったんですが、震災や少子化の影響で、共同で子どもたちに神楽を教える必要が出てきて、時間をかけて対話をし、お互いのことを理解してきました。
ちょうど3年前、中浜神楽のおじさんたちが、神楽のこと、自分たちの生活のこと、中浜が完全に失われてしまうことに対して、すごく悩みを抱えている時期がありました。そこで、中浜神楽のおじさんたちを沖縄・家島に招待し、家島の民俗芸能の皆さんと交流してもらうことにしました。家島は文化に明るく、とても元気な地域。たった3時間の交流でしたが、おもしろいことが起きたんです。レジリエンスです。みなさん、俺たちもまだやれるんじゃないか、と元気を取り戻しました。自分たちの力でどうにかしたいっていう思いが生まれた。自分たちが未来に何を残していきたいのかを自分たちで考えるようになったんですよね。
ー 及川:とても面白いです。千田優太さんも郷土芸能に関わっておられましたよね。
優太:僕は、岩手県の大船渡市を中心に、三陸沿岸の神楽に関わっていました。郷土芸能がやっていることは本当に芸術だなと思って、僕は観たり教わったりしていますが、やっている人たちは自分たちが芸術をやっている意識は全くないんですよね。そこがすごく考えさせられた。もしかしたら、みんなが芸術に関わることをめざしていくと、そんな感覚になっていくのかもしれません。毎日歯を磨くようにして、太鼓を叩いて歌っている。それは本当にすばらしいことだと思います。
みなさん、どうやって活動資金を集めている?
ー 及川:そろそろお金の話もしましょうか。皆さんの資金源をシェアしませんか。
及川:PLAY ART!せんだいは、今のところ、仙台市文化プログラムの受託が、2019年から3年続いています。2019年〜20年は仙台市との共同予算が主に活動資金源になっています。今年度はメディア芸術もあたらしく採択され、持続可能な社会を目指す助成金も今後採択が決まったら、今年度の事業をします。メンバーはそれで食べていくことはできてなく、他のお仕事をそれぞれしていますね。
優太:自分は、仙台市の助成金、寄付、公演のチケット代(受益者負担)の3つが主な収入源ですが、圧倒的に助成金です。もちろん生業としては成立していないので、平日日中は、放課後等デイサービスに勤めながら、あいだの時間で文化芸術の活動をしています。
祥子:音楽の力による復興芸術センターの場合は、仙台市の委託事業の委託費と、復興庁系のこころの復興事業に採択受けた助成金、寄付を受けたりしています。
桃生:私の団体は、利府町の公共施設運営をしているので、そこの業務委託のお金が年間2000万円。規模としてはそれが一番大きいですね。それ以外は、企業さんからの受託仕事などです。スタッフも6〜7人くらいいて、全員利府の施設のスタッフとしているので、その事業が無くなったら困りますね〜。でもまぁ、長くないよと最初に言って入ってもらっている人たちなので、その辺はご了承いただいていると思います。
芙由子:千田優太さんの話ですが、一般の方からチケット代や参加費の割合を増やせたらと私は思っています。一方で、運営している劇団で黒字を生むようにと頑張っていたんですがむずかしく。優太さんは黒字を生むことを目的としていないと以前おっしゃっていて、パフォーマンスをやる上でそういう考え方もあるんだと思ったことがあります。
優太:前に自分が企画したダンス公演で、助成金なしで赤字がでないチケット代を計算したら、1万円超えたんですよね。それじゃ、高すぎるじゃないですか。だから、助成金を使って、受益者負担を減らす。本来であれば助成金をもらったとしても、チケット代を1万円にしてちゃんと収入を得ていかないと生業にはならない。自分の手元に残す考えではないから、経営的には難しいですよね。
菅野:資金としては、仙台の場合、脆弱すぎる。今お話伺っていると、皆さん仙台市の助成である話が多くて、それ以外の資金源がないというのは1つが無くなっちゃうと結局何もできなくなる。それから、助成金の手続きが大変でなかなかファンドレーズができていないこともありますよね。補い合って大きなファンドを得るような繋がりが生まれるといいですよね。
参加者:仙台市のなかで、アートに関わっている人たちがどうやってポジティブに活動していくか、考え行動していかないといけない時代ですね。
菅野:いろいろ課題があって、わたしはとてもたのしみです。皆さんのお話を聞いていて、リソースはあるんだとわかりました。問題意識をこれからも共有していって、補えること、一緒にできることを探して、これからの可能性を開拓していきたいですね。
(まだまだお話はつきませんが、ここらで。)
プレイアート・ラボ、まだまだつづきます。
次回以降もぜひご覧ください。